現在は「所有」から「使用」へと価値軸がシフトし、持たずの社会が到来しています。その一方、空き家問題などに代表されるように、使っていないのに手放すことができない、いわば倉庫型の社会構造から抜け出せないままになっています。このような状況から脱却するためには、茫洋とした余剰を削り込み、無に近づける必要があります。そのことを表現しているのが「ナッシング・フィールド」です。これには、物を処分して身軽になる断捨離といった要素もあれば、どんな思想や背景が自分自身を形成しているのかという哲学的な問いかけも含まれます。これまでの人生で染み付いた思い込みや固定観念を剥ぎ取ることで、核をなす本質的なものを見定めることができるのです。圧倒的な引き算によって、コンセプトは極めてシンプルに磨かれていくという認識は、ビジネスにおいても非常に重要です。数打てば当たるというような方法論ではなく、自身の得意技を磨き絞り込むからこそ、無駄のない効率的な事業戦略につながっていきます。本質へのプロセスとも言える「ナッシング・フィールド」の到来を、しっかりと認識しておきましょう。
谷口正和
2019年5月13日 ジャパンライフデザインシステムズ
0コメント